アメリカ南部のある刑務所―。出所したばかりの元囚人たちが、迎えに来た愛する家族と抱き合うなか、殺人罪で6年の刑期を終えて出所したブレット(ウィリアム・ハート)を待つ者は誰もいない。
近くの食堂で6年ぶりのビールをゆっくりと飲み干す。店内の窓越しに眺めていたバスに乗ってミシシッピー川のほとりにあるフェリー乗り場で佇んでいると一台のフォードがやってきた。運転しているのは食堂で見かけた落ち着きの無い青年ゴーディ(エディ・レッドメイン)、助手席にいるのは彼に声をかけられた少女マーティーン(クリステン・スチュワート)だった。
マーティーンは失恋で鬱屈した気持ちを抱えていており、ちょうど居合わせたゴーディを誘ったのだった。一部始終を目の当たりにして、マーティンの事情を把握したブレットは「今はまだマシだと思えばいい。今によくなる」と彼女に声を掛ける。
初対面にも関わらず励ましの声をかけてくれたブレットに親近感を覚えたマーティーンは、ブレッドに一緒に車に乗らないかと誘う。突然の展開にブレットは戸惑うが、変わり者のゴーディと二人でいるのは心配だというので、仕方無しにその誘いを受けることにした。
すると遠くから雷鳴が響き渡り、激しい雨が降ってきた。オープンカーの屋根を出して急場を凌いでいると、フェリーの乗組員が嵐のせいでフェリーが片道運航になったことを伝えてきた。
ワイパーが意味を成さないほどの悪天候の中、ゴーディが運転していると、あやうくトラックと衝突事故を起こしそうになる。天候が回復するまでは運転を控えたほうがよいと思ったブレットは、二人にモーテルで嵐をやり過ごそうと提案する。フロントに行くと無愛想な女主人(桃井かおり)から空き部屋は一つしかないことを告げられるが、近くに他のモーテルがないためやむを得ずその一室を3人で借りることにした。ブレットはフロントの出口の横にある郵便ポストに一通のハガキを入れる。
ベッドが一つしかない狭い部屋に入ると、マーティーンの携帯電話に父親から連絡が入る。勝手に家を出たことを叱責しているのだ。電話を切った彼女は浴室に駆け込み、声を殺しながら嗚咽した。その夜、マーティーンはベッド、ゴーディは床、ブレッドは浴室で寝ることになったが、しばらくするとゴーディがマーティーンの横に滑り込んできて、不器用ながらも彼女を口説きだした。
このまま襲われるよりはいいだろうと、最大限の譲歩でキスだけは許したのだが、欲情したゴーディは、マーティーンに覆いかぶさってきた。懸命に抵抗し泣き叫ぶマーティーンの声を聞いて、浴室から飛び起きたブレットが寝室に入ってきた。ひと目で状況を察知したブレットは、自分と入れ替わって浴室で寝るようにゴーディに言う。
翌朝、ブレットはゴーディに車でここまで連れてきてくれたお礼と、自分はこれからバスで南へ向かうことを伝えた。一緒に行きたいというマーティーンも同行することにした。バス停での待ち時間、ブレットは自分が以前にニューオリンズ近くの石油掘削所で働いていた事、マーティーンは父親と折りが合わないでいることなど、それぞれの身の上話をする。そこに、見覚えのあるフォードがやってくる。ゴーディだ。昨日の嵐の影響で二人が待つバスは勿論、全ての公共交通機関が運休するとのこと。
そして、三人の旅が再び始まった。車内で食べたザリガニが当たったのか、腹具合が悪くなったゴーディは無人の民家でトイレを借りることにしたが、ドライブウェイでオイルタンクをぶつけてしまう。予期せぬトラブルで足止めを食らってしまい、マーティーンはゴーディを軽蔑する。しかし、ブレットは「あいつは結構まじめだ。ただ未熟なだけ」と言うのであった。
夜明けに修理を終え、なんとか再び旅路につくことができた三人をまたまたトラブルが襲う、買出しに訪れた雑貨店で、ゴーディが車のドアを開けると、隣に停めてあった車にぶつけてしまったのだ。怒った車の持ち主はゴーディを殴り、弁償を求める。しかし、ブレットによっていとも簡単にのされてしまう。
急いでその場から立ち去る三人。マーティーンは酷くおびえていた。「パパが心配している」。するとゴーディは「俺の事を心配してくれる人は誰もいないけどね」と呟き、故郷で疎まれ、自分の居場所を失い、死ぬ程退屈な毎日を送っている自分の境遇を告白するのだった。それを聞いたマーティーンは彼も自分と同じような境遇にいたことを初めて知った。
車の後部から聞こえるパトカーのサイレン音。停車を命じられたブレットは、警察から免許証の提示を求められた。「刑務所にいたので、免許証がない」ブレットは手錠をかけられ連行されてしまう。署で事情聴取を受けるが、担当の巡査部長が顔見しりだったため、すぐに釈放され事なきを得る。これ以上ゴーディとマーティーンに迷惑をかけるのは忍びないと、立ち去ろうとしたブレットだったが、マーティーンに引き止められる。
そして、ブレットは訥々と自分の過去を語り始めた。三人が嵐の日に立ち寄ったモーテルで投函したハガキは服役中に離婚届を突きつけた元妻メイ宛であること、その手紙には、もし自分ともう一度会ってくれるなら、思い出の黄色い帆を一杯に張って待っていてほしいこと、黄色い帆が張ってなければそのまま立ち去る、と自分の思いを綴ったことを打ち明ける。ブレッドの過去を聞いた二人は、ニューオリンズにいるメイに会いにいくべきだと主張する。気持ちが揺れていたブレットだったが、二人の言葉に背中を押され…。
山田洋二監督の『幸福の黄色いハンカチ(1977年)』のリメイク権を獲得し、本作品を手がけるのは6度のアカデミー賞を受賞している名プロデューサー、アーサー・コーン。日本版は主人公の島勇作を日本を代表する俳優・高倉健を演じたが、ハリウッド・リメイク版となる本作品では、『蜘蛛女のキス』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した実力派ウィリアム・ハートが哀愁を漂わせる主人公ブレッドを好演している。
ニューオリンズでブレットの帰りを待っている妻メイ役には、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされたの演技派マリア・ベロを起用。そして『トワイライト』シリーズのヒロインとして絶大な人気を誇るクリステン・スチュワートと、成長株エディ・レッドメインが、自分の居場所を失いかけてブレッドと共に旅に出るカップルを演じている。
さらにアーサー・コーンが、オマージュを捧げたいと希望したため、オリジナル版で小川朱美役を演じ、アメリカにも活躍の幅を広げ始めた桃井かおりがモーテルのフロント係で出演している。